色々な毒 第4回 硫化水素
Kurare12


 硫化水素自殺が後をたたない。
 事の発端は、どこぞの自殺系サイトで硫化水素自殺は楽らしい・・・・なんて情報を発信したのが最初で、その後、某社の入浴剤と酸性洗剤を混合することによって硫化水素を発生させ、それを吸入して自殺するという、たいへんに面倒な上に迷惑この上ない自殺方法が確立されてしまった。
 
 硫化水素といえば、理科の授業でも出てくる、比較的馴染みのある気体であり、実験室では硫化鉄に塩酸を加え発生させている。

FeS + HCl → FeCl2 + H2S

水素を2つもったイオウということで、分子構造は水に近いが、性質は全く異なり、低濃度であれば、それ程猛毒というほどでもなく、実際に温泉地が近い鉱泉には比較的多く含まれており、微量の硫化水素が溶けた水はむしろ健康増進(免疫を刺激して活性化させる)もあるという話もあるくらいで、卵が腐った臭い、下水の臭いなどと言われるように、意外と身近にも存在する。
 しかし高濃度になると、シアン化水素に匹敵する毒性を持つのだが、シアン化水素の致死量は実は塩素より多い。
 とはいえ、塩素は致死濃度を呼吸するのは非常に困難で、気道が焼けるような痛みがあり、故意に塩素ボンベでもぶちまけない限り、普通に混ぜるな危険をやっても死ぬようなことはない。(もちろんやらないほうがいいが(笑))
 シアン化水素は、致死濃度であっても非常に認知しにくく楽に呼吸ができて、そのままイチコロリンしてしまうので危険というわけです。
 で、硫化水素は、ガスとしては低刺激なので吸い込めなくはない・・・というレベルではあるが、かなり臭い。ただし臭覚麻酔性があるので、徐々に濃度を上げていけば分からないあいだに致死濃度に達することも可能であり、この辺が自殺に使われた理由だろう。
 0.06%(600ppm)であれば30分以内に死亡し、ppmってレベルじゃない濃い気体を吸い込むと瞬間的に死ぬ・・・・・こともある。
 この「こともある」というのは、確実に死ぬという保証が無いことを意味するわけで、「死ぬほど苦しんで」死ぬこともありえるといえる。
 硫化水素は酵素に働きかける毒物であり、チトクローム酸化酵素阻害をはじめ、様々な生命を維持していくのに必要な酵素の働きを邪魔することで、細胞レベルで窒息死していく。それは猛烈な頭痛や吐き気、悪寒、呼吸困難、気管支炎、しかも運良く助けられたりすると、肺水腫などの循環器系障害が重くのしかかることになる。自殺したければ首つり一択。薬物死は高高度の医療知識が無ければ、安楽にはとても逝けないのである。おまけに部屋一杯に充填された硫化水素は極めて除去しにくく迷惑千万。しかも発火性気体でもあるので、火災の危険性も倍増。いいことなしである。
(ライター:ドクタークラレ)

【参考URL】
・硫化水素 - Wikipedia
・自殺対策支援センターライフリンク 自殺者統計
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